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2008年7月 4日 (金)

[nekodemo]金商法とアートの資金調達について一言

他にやることもあるのでブログを書いている場合じゃない気もするんだけど、書かずにはいられないことがあったのでエントリー。

磯崎先生のところで、金商法によってアート作品制作の資金調達が難しくなるんじゃないかという話が書いてある。この話題に反応しないわけにはいかない。金商法に対して物申すわけではないが、アート業界ってどうよ?という視点でエントリーを書くことにする。

まずは磯崎先生のブログから引用。isologue - by 磯崎哲也事務所: 今時のインディーズ映画制作と金商法(規制のおさらい編)より。

先日、メールで、「映画を制作するのに数千万円程度の資金を集めたいのですが...」というご相談がありました。しかし、この手のご相談が、今、もっとも困っちゃうのであります。

つまり、結論からすると、金商法の施行により、今や映画を作るために資金を集めると、「みなし有価証券の自己募集」ということになり、「第二種金融商品取引業者」の登録を受ける必要があるということになっているのではないかと思います。
つまり、単に映画作りたいだけなのに、「金融業者」として登録をして金融庁の監督下に入れ、さもなくば三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金だぞ、ということかと。

普通に自主制作映画のようなものを作ってる人たちって、そういうことには気づいてらっしゃるんでしょうか?今までの日本では、「アート」と「ファイナンス」の人たちというのはまったく住む世界が違っていたので、気づいていない人も多いんじゃないかと思います。

磯崎先生が書かれている通り、上記のようなことに気づいているアート関係者は皆無に近いだろう。大規模な組織で作品作りをやっているところならまだしも、小規模で地道にアートしてる人たちでそんなことを調べている人は、まず存在しないと思われる。「キンショーホー? それって食べれるの?」とか言われそう。

ちなみに磯崎先生は、この、映画を作る資金調達に関しての質問に回答したところ、こんな事態になったそうだ。

以上のような法改正の要点を詳しくご説明して、「このような法改正が行われた結果、ご相談にみえてもお役に立てないと思いますよ」、ということを婉曲にお伝えしたつもりだったのですが、

「ホームページで見る分には親切に相談に乗ってくれそうだったのに、そういう言い方されると取りつく島がない。知識があるのはよくわかったが、性格に問題があるんじゃないか?」

的なことを言われまして・・・・どうも、不快な思いをさせてしまったようですみません・・・。

誰でしょうか? こんなトンチンカンなこと言った映画人は。恥ずかしい。

世のアート・マネジメント関係者は、上記と同じ恥ずかしさを味合わないようにするためにも、このエントリーをぜひ一読することをお勧めしたい。それなりの規模の資金調達をして作品をつくるアートというと、映画・アニメなどの映像系なのかなぁと思うので、特にそっち系の人たちは読むべし。あと、スキームの一つとして関係するかもしれない劇場・施設運営者も読んでおくべし。いろんな人からお金集めて劇場作ろうとしてるところとか。
もちろん他のアート分野の人でも、今後資金調達する可能性があるのであれば、知識として抑えておいたほうが良いだろう。

しかし、日本ってアート界そのものが、はじめからそんなに資金調達していないような気もする。どうだろう? 私はもともと演劇系の人間なので演劇業界しか知らないが、いわゆる小劇団から成り上がっていくときに、どっかからお金持ってくるってあまり聞かない。主宰者が「個人」的に借りてくるぐらいだろう。(資金調達してでっかく興行してお金返す、という発想が、最初から頭の中の選択肢として存在していないのかな?)
ある程度有名になってきたら、それこそ映画の製作委員会方式で、この金商法に引っ掛かるようなスキームとは違う形でお金を用意するのだろうし。
なので、とりあえずは磯崎先生が書いているとおり、自主映画業界がこの問題に一番引っ掛かりそうだ。

ところで、大澤さんのブログで先日こんなエントリーがあった。TORAO.doc: 寄付することの素朴な楽しみより。

日本での芸術活動を取り巻く経済的な基盤の脆弱さは切実に感じています。この課題解決の糸口として、たびたび寄付を促す制度について議論されます。
私は5年ほど前に、アメリカでの1年間の研修で、NPOによる劇場運営を勉強させてもらいました。よく言われるように、寄付に対する意識や文化的な土壌、それに税制上の優遇措置など、日本との違いは明らかでした。実際、日本に帰国して、じゃあアメリカを参考にしてやってみましょう、というわけには、まったくいきませんでした。

とかく話題にされがちな、芸術団体への寄付制度。儲からない芸術をやっている、寄付してほしそうな芸術団体はいっぱい存在している。
だが、これまた大澤さんが書かれているとおり、日本に寄付という概念は未だ馴染んでいない。
なので寄付が集まるよう意識づけしましょうよみたいな議論になることがあるのだけど、個人的には寄付文化を根付かせることに力を注ぐよりも、他の資金調達手段を考えてその事例を共有したほうがいいアイデアが出てくるんじゃないかと思っている。そうすると、ここにきてその一つの選択肢である出資による調達が金商法に阻まれるのなら、とても悔しい。(寄付じゃないお金集めというと、結局どこかでリターンを追求しないといけないので、そうやってビジネスモデルを描くことは寄付金を集めること以上に大変だろうけど。)つい先日書いた、ミュージカルファンドの話もそんな私の考え方の背景がある。

あと、磯崎先生のエントリーに対するはてブコメントで、「出資じゃなくて借り入れすればいいのでは?」みたいなのがあったが、私としては借り入れは良くないと思っている。仮にそのアート事業が失敗したとき、返済のために延々と次の事業を続けなければならなくなる。失敗をしたがために、才能の芽がある(かもしれない)アーティストに借金返済を動機とした事業をさせるのはいかがなものか。それよりも、当たるも八卦当たらぬも八卦で一つの作品に取り組ませたほうが健全だと思う。VCと同じだね。
ま、現実論として、ウン千万円を無担保で貸してくれる金融機関があるとは思えないということと、借金返済のために事業を継続してもそもそもアートは確実な収益を生み出しにくいので最初から論理が破綻してるんだけど。

さて。
と、いろいろ書いてしまったが、
何より、アート関係者で金商法のことに誰も触れないのは、アートの人たちはその方面にまったく疎い人たちの集まりだからであって、じゃぁそれを解決するためにはファイナンス分野なりリーガル分野の人がアート業界に興味を持って入ってきてくれることが大事だと思う。しかし、ちまちま小さくやってるだけだと彼らの目にアート業界は入ってこなくて、アートの人たちと外部の人たちは、お互いにずっと違う世界の人同士のままである。
この件に限らず、日本でアート・マネジメントやってる人たちの世界はまだまだ狭いので、外部の視点を積極的に取り入れるべきだ。外部の人たちに「アートマネジメントに興味を持ってください」といきなり言っても持ってくれるはずなんてないので、興味を抱かせるためのフックに、資金調達問題みたいなものが役割を果たしてくれればいいと思っている。

そこで、ぜひ磯崎先生には続編を書いてもらいたい。
ぜひぜひお願いします!
(正直に告白すれば、私も金融機関勤務ながらよく分かってないので教えてくださいm(_ _)m)

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